指定商品・役務

 商標法には、「指定商品・役務」に関する規定がたくさんあります。「指定商品・役務」は商標実務において、非常に重要な要素です。

指定商品・役務と事業との関連性および重要性

 商標(標章:マーク、商品名)は、会社名、ブランド名や商品名・サービス名に対応します。

 指定商品・役務や区分は、事業区分や商品・サービスの種類に対応しています。

 ここで、商標(標章:マーク、商品名)は、市場等において非常に重要ですが、比較的簡単に変更可能です。商標は、目印ですので、リニューアル等、適宜、商品名・サービス名を変更することができます。

 指定商品・役務は、事業範囲・内容を示すものですので、実は「コア」な部分なのです。商標とは違い、簡単に変更するものではありません。商標(標章:マーク、商品名)に目が行きがちですが、指定商品・役務は企業等にとって(ビジネス面において)非常に重要な要素なのです。

 指定商品・役務は、ハウスマーク、ブランドネーム、ペットネーム等のレベルに応じて範囲設定されます。

手順・手続きからみた指定商品・役務

 商標実務の手順・手続きごとに、調査、出願、審査、審判、権利面における指定商品・役務の役割を簡単にまとめると下記のようになります。

・調査:調査範囲

・出願:願書記載(範囲)

・審査:審査対象(範囲)、識別力、類似等

・審判:審査対象(範囲)、識別力、類似、不使用等

・権利:権利範囲、類似、使用等

⇒下図のように「対象・範囲」「商標との関係(識別性)」「類似」「使用・不使用」の視点に大きく関与しています。

 「商標との関係(識別性)」「類似」との関係について少し補足します。 

商標との関係(識別性)

 指定商品・役務は、商標(標章)の識別力と関係します。言い換えると、識別力は、指定商品・役務との関係が重要です。

 特に、3条1項3号は、指定商品・役務との関係が重要であり、影響が大きいです。

類似の概要

 「類似」は、「商標」と「指定商品・役務」との両方の面から規定されます。「類似」は、出願された商標の審査や、商標権の範囲に大きく関係してきます。以下に「同一範囲」「類似範囲」について簡単にメモします。

 ◎「商標:同一」「指定商品・役務:同一」⇒同一範囲

 ○「商標:類似」「指定商品・役務:同一」⇒類似範囲

 ○「商標:同一」「指定商品・役務:類似」⇒類似範囲

 ○「商標:類似」「指定商品・役務:類似」⇒類似範囲 

出所混同と類似

 商標の役割として、「出所混同防止」が重要です。そして、「類似」は、「出所混同防止」における重要な要素です。

 具体的には、「出所混同」の有無は「類似」のほか、「周知性」「取引実情」「使用有無」等を総合的に勘案して判断されます。

 

 ここで、審査時等においては、「周知性」「取引実情」「使用有無」等の立証はに労力が必要であり現実的には困難であるため、行政効率等の面から、「類似であれば出所混同が生じる」として処理が進められます(「画一的」処理)。

 

 そのため「類似」という概念は重要な要素であり、商標実務においては、「類似するか否か」の判断は非常に重要になっています。 

 

 そして、審査時における「画一的」処理に活用されるのが、「類似群コード」です。実務上、非常に重要な要素です。

 「指定商品・役務の類似」は、審査、審判および訴訟等において認定・判断されます。

 審査時においては、「類似群コード」に基づいて「画一的」に認定・審査されます。

 審判時においては、具体的な事情を汲んで認定・判断される傾向にあります。商標実務においては、類似か否かの判断(類否判断)におけるきわ(外縁)を把握するために審判における認定・判断は重要視されています。

 訴訟時においては、より具体的な事情(取引実情、商標の使用態様等)を考慮し、実際の「出所混同」の有無を認定・判断するために検討されます。

「商品」とは

 「商品」の定義はありませんが、基本書等においては、「商品とは、商取引の目的物たり得るべき物、特に動産」と規定されています。

 判例等においては、「独立性」「有償性」「流通性」「動産性」が商品の要件になっています。

 通常、商品か否かはあまり意識しませんが、権利行使や使用の可否判断時等においては、重要な要素です。

 商標法上の商品ではないものとして、例えば、下記があります。

独立性  ×ノベルティ・販促品(BOSS事件)

有償性  ×無償配布物

流通性  ×店内のみ流通する飲食物(中納言事件)

動産性  ×土地・建物、○プログラム

「役務」とは

 「役務」についても定義はありませんが、基本書等においては、「役務とは、他人の為に行う労務又は便益であって独立して商取引の目的たりうべきもの」と規定されています。

 「他人の為に行う労務又は便益」ですので、「自己の為に行うもの」は除かれます。例えば、「自社商品の広告の作成」は役務ではありません。

 また、「独立して商取引の目的となる」ですので、「付随的サービス」は含まれません。例えば、「宿泊ホテルの送迎」や、「注文料理の出前」は役務ではありません。

指定商品・役務、区分

 まず、第6条1項(一商標一出願)には、「一又は二以上の商品(役務)を指定して、商標ごとに出願しなければならない」と規定されています。また、「政令で定める商品(役務)の区分に従ってしなければならない」こと、「商品(役務)の区分は、類似の範囲を定めるものではない」ことが規定されています。

 指定商品・役務や区分に関する重要かつ具体的な事項は、下記に記載されています。

・「省令別表」:ニース分類の内容に削除・追加・修正したもの

・「類似商品・役務審査基準」:省令別表⇒類似群コードを付与したもの

 これらのチェックは、出願や調査時において最初に必要になる作業です。特に、指定商品・役務のリストアップと、対応する類似群コードのピックアップは最重要事項です。

 ここで、出願したい商品が「類似商品・役務審査基準」に例示されていない場合、いわゆる「積極表示」が必要です。 

区分一覧

第 1 類   工業用、科学用又は農業用の化学品

第 2 類   塗料、着色料及び腐食の防止用の調整品

第 3 類   洗浄剤及び化粧品

第 4 類   工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤

第 5 類   薬剤

第 6 類   卑金属及びその製品

第 7 類   加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械

第 8 類   手動工具

第 9 類   科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査

      用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具

      及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電

      気制御用の機械器具

第 10 類  医療用機械器具及び医療用品

第 11 類  照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又

      は衛生用の装置

第 12 類  乗物その他移動用の装置

第 13 類  火器及び火工品

第 14 類  貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計

第 15 類  楽器

第 16 類  紙、紙製品及び事務用品

第 17 類  電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック

第 18 類  革及びその模造品、旅行用品並びに馬具

第 19 類  金属製でない建築材料

第 20 類  家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの

第 21 類  家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品

第 22 類  ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維

第 23 類  織物用の糸

第 24 類  織物及び家庭用の織物製カバー

第 25 類  被服及び履物

第 26 類  裁縫用品

第 27 類  床敷物及び織物製でない壁掛け

第 28 類  がん具、遊戯用具及び運動用具

第 29 類  動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物

第 30 類  加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料

第 31 類  加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料

第 32 類  アルコールを含有しない飲料及びビール

第 33 類  ビールを除くアルコール飲料

第 34 類  たばこ、喫煙用具及びマッチ

第 35 類  広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行わ

      れる顧客に対する便益の提供

第 36 類  金融、保険及び不動産の取引

第 37 類  建設、設置工事及び修理

第 38 類  電気通信

第 39 類  輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配

第 40 類  物品の加工その他の処理

第 41 類  教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動

第 42 類  科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウ

      ェアの設計及び開発

第 43 類  飲食物の提供及び宿泊施設の提供

第 44 類  医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は

      林業に係る役務

第 45 類  冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属

      するものを除く。)、警備及び法律事務

指定商品・役務の類似の判断(審査基準)

 指定商品・役務の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を総合的に考慮した上で、個別具体的に判断するものとされています。

 

<商品の類否判断の基準>

・生産部門が一致するかどうか

・販売部門が一致するかどうか

・原材料及び品質が一致するかどうか

・用途が一致するかどうか

・需要者の範囲が一致するかどうか

・完成品と部品との関係にあるかどうか

類似群コード

 「類似商品・役務審査基準」は、生産部門、販売部門、原材料、品質等において共通性を有する商品、又は、提供手段、目的若しくは提供場所等において共通性を有する役務をグルーピングし、同じグループに属する商品群又は役務群は、原則として、類似する商品又は役務であると推定するものとしています。

⇒「類似群コード」が付されています。

 

 審査実務上、同じ類似群コードが付された商品及び役務については、原則としてお互いに類似するものと推定されます(特許庁)

 これは、商標登録出願審査の便宜と統一のために定められた内規ですが、審査実務においては、原則に近いものです。

  

 類似群コードに関する注意点として、下記があげられます。

・「他類間類似」類似群コードは同じだが、区分が異なる

・「備考類似」類似群コードが異なるが、個別的に商品・役務が類似するとしたもの

 

 以上、指定商品・役務の概要についてご説明しました。ご不明点等はお気軽にお問い合わせください。

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