第4次産業革命への対応

 近年、第4次産業革命への対応が重要視されています。例えば、日本再興戦略やロボット新戦略等に続き、「未来投資戦略2017」において、「中長期的な成長を実現していくため、第4次産業革命の技術革新をあらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決するSociety 5.0を世界に先駆けて実現する」こととしています 。第4次産業革命の技術革新について、単に技術面の革新ではなく、社会解決を解決する手段と捉えられていることがわかります。その結果、様々なソリューションやサービスとして具現化され、社会に提供されることが予測されます。従来のように、製品、モノではなく、ソリューションやサービスの提供が重要になっています。

 上述のように、第4次産業革命が進むなか、技術的にはIoT、ビックデータやAIの活用等のデータ主導化が進み、事業的にはサービス化やソリューション化等が進んできています。第4次産業革命により、企業における業態が大きく変化してきています。そして、このような変化は、知財戦略・活動にも大きく影響します

 

IoT,AI,BD等の影響 ⇒ 業態変化「サービス化」「ソリューション化」

 IoT、ビックデータ、AI等を中心とする第4次産業革命が進むなか、各産業において、データ主導型の改革が行われており、業態変化が進んでいます。知財情報分析により、IoT、AI等の活用度合い、サービス・ソリューション化の進展等につき確認した結果を下記に説明します。具体的には、特許情報、商標情報および意匠情報それぞれの視点で調査分析した結果を下記に説明します。

特許情報分析

 第4次産業革命の重要な要素であるセンサーデバイス、大容量・高速通信、ビックデータ、AI、IoTおよびビジネスモデル関連発明は、互いに関連し、例えば、下図のような関係にあります。本特許情報調査においては、AI、IoTおよびビジネスモデル関連発明を中心に、サービス・ソリューション化の視点も踏まえた調査分析を行っています。 

Gセクション

 ビジネスモデル関連発明を含むコンピュータソフトウェア関連発明等に付与されるIPC分類である「Gセクション」について、件数推移および割合(対公開件数(全体))について調査しています。サービス・ソリューション化の視点を踏まえた調査分析です。

 下表に示すように、Gセクションの割合(対公開件数(全件))は増加傾向であることが確認されました。

 また、Gセクションにおける各分野の件数割合(対公開件数(全件))および推移等を調査しました。下表に示すように、Dセクション(繊維・紙)の件数割合および増加率(対2014年)が低いものの、他のセクションは、一定件数割合であり、増加傾向であることがわかりました。第4次産業革命においては、IoT,AI技術等を利用・含むシステム開発が重要になり、Gセクションの特許出願件数も増加する傾向にあることが示されています。

 件数割合としては、G×H(電気)、B(処理操作・運輸)の件数割合が高く増加率ではEセクション(固定構造物)、Aセクション(生活必需品)およびBセクション(処理操作・運輸)が高いことがわかりました。

ビジネスモデル関連発明

 上述のGセクションのうち、ビジネスモデル関連発明(G06Q)について、各年の出願件数推移、割合(対出願数(全体))および増加率(対2013年)について調査しました。下表に示すように、G06Q合計の割合(対出願数(全体))は、増加傾向にあることが確認されました。また、G06Qにおける各産業分野の出願件数は、全体的に維持または増加傾向であり、増加率(対2013年)より全産業分野で増加していることが確認されました。 

 詳細には、件数の多い分野は、「サービス業一般」「EC・マーケティング」「管理・経営」「金融」「ヘルスケア」等の分野です。これらの分野は、G06Qの技術の開発等に注力している分野であるといます。

 増加率の高い分野は、「管理・経営」「金融」「第二次産業(製造業、建設業)」「第一次産業(農業、漁業、鉱業等)」「ヘルスケア」等です。これらの分野は、G06Qの技術の開発等への注力度合いがUPしている分野であるといます。製造業、建設業や農業等の分野が伸びていることも特徴の一つであると思います。

 また、上述より、「件数多く」+「増加率が高い(伸びている)」分野は、「管理・経営」「金融」「ヘルスケア」分野です。これらの分野は、G06Qの技術の開発等に継続的に注力し、今後も更に注力する分野であると思います。

IoT関連発明

 IoT関連発明(全体)の件数(公開件数)推移や各分野ごとの件数について調査しました。まず、IoT関連発明(広域ファセット:ZIT)の各年の件数推移を調査した。下表に示すように、IoT関連発明(ZIT)の件数は増加傾向にあり、特に2014年以降は大幅に増加していることがわかりました。また2018年においては更に急増していることが確認されました。

 続けて、各分野におけるIoT関連発明の件数および割合(対IoT関連発明全体)について調査分析しました。下表に示すように、いずれの分野においても一定件数以上のIoT関連出願がなされていることがわかりました。特に、サービス業務用(ZJM)、運輸用(ZJT)、ヘルスケア用(ZJP)、ームアンドビルディング用・家電用(ZJG)の分野における件数・割合が多いことがわかりました。 これらの分野は、IoT技術の開発に積極的な分野であることが示されてます。これらの分野における事業において、IoT関連発明という視点は必須+重要となり、技術開発、知財活動、事業活動においては、IoT(データ取得・処理、制御等)の視点は必須です。

AI関連発明

 AI関連発明(全体)および各技術分野ごとの出願件数推移、割合(対出願件数(全体))および増加率(対2013年)について調査しました。下表に示すようにAI関連発明合計の件数および割合(対出願数(全体))ともに、増加傾向にあることが確認されました。特に、2016、17年においてより高い増加傾向であることが確認できました。AI活用の視点が重要になってきいること、更には、どのような分野でもAI活用という視点が重要になっていることがわかります。

 

 また、AI関連発明における各技術分野の出願件数は、全体的に増加傾向であることが確認され、増加率(対2013年)より、特にB25J(マニュピレータ)、G05B(制御系・調整系一般)、H04N(映像処理)、G06Q(ビジネス)、G06T(画像処理)が増加していることが確認されました。これらの技術分野において、AI技術が注目されていることがわかりました。やはり、処理する情報量が膨大になる技術について、AI活用が進んでいることがわかりました。 

商標情報分析

 第4次産業革命の進行が商標・ブランド分野に与える影響を調査しました。下記(1)~(3)について商標情報分析した結果を下記に提示します。

(1)指定役務(サービス)の割合推移

(2)商標:第4次産業革命の技術キーワード

(3)指定商品・役務:第4次産業革命により生じた事業

指定役務(サービス)の割合推移

 指定商品(第1~34類)の件数と指定役務(第35~45類)との件数(出願)割合の推移を調査しました。下表に示すように、2014年から指定役務の件数割合が増加し、2016年で指定商品の件数割合と逆転し、近年は指定役務の件数割合の方が多くなっていることが確認できました。また、指定役務全体の増加率(対2013年)が+357%であり、5年間で4.5倍に増加していることがわかりました。これにより、ビジネスのサービス化が進んでいることが確認できました。

 各区分においても件数が増加傾向であり、特に45類、39類、38類、37類、37類、42類が増加傾向であることが確認されました。 

商標:第4次産業革命の技術キーワード

 第4次産業革命の技術キーワードについて、商標(検索用)調査を行いまた。下表に示すように、第4次産業革命の技術キーワードを含む商標(別の意味として出願された商標もあるが)が一定数登録等されていることがわかりました。特に2015年以降に登録された件数も多く、これらは第4次産業革命のキーワードであることを認識して出願・登録されたものであると考えられます。

 商標分野において、第4次産業革命の影響が及んでいること、技術キーワードについて商標出願競争等が生じ得ることが示唆されていると考えます。

指定商品・役務:第4次産業革命により生じた事業

 第4次産業革命の技術キーワードを含む指定商品・役務を調査しました。下表に示すように、第4次産業革命の技術キーワードを含む指定商品・役務は存在しており、当該分野における事業化が進んでいると予想されます。また、これらの区分としては役務の区分が多いことも確認されました。IoTやAIを中心とする新技術を活用したシステム等の事業化が進んでいること、特にサービス事業として進んでいることが示唆されていると思います。

意匠情報分析

 第4次産業革命の進行が意匠分野に与える影響を調査しました。

 画像を含む意匠出願(画像系)の件数推移、割合(対出願(全体))について調査しました。下表に示すように、画像系の件数・割合とも減少傾向でした。

 ここで、画像を含む意匠出願(画像系)のうち、意匠分類H7(電子情報入出力機器)を除いた出願件数の推移および割合(対画像系(全体))について調査ししまた。つまり、従来から開発が盛んで出願の多い電子情報入出力機器以外の分野について、調査しました。

 下表に示すように、画像系(H7除く)の件数割合は増加傾向であり、電子情報入出力機器以外の分野において画像を含む意匠の開発・出願が増加していることが確認されました。

法改正・審査基準改定

 法改正・審査基準改定について、近年で大きな改正等として下記があります。

(1)IoT・AI審査基準の拡充

(2)意匠の改正法:物品の拡充(物品に記録・表示されていない画像:①クラウド上に保存され、ネットワークを通じて提供される画像、②道路に投影された画像)

 上記1)によりIoT・AIの開発および事業化が推進され、(2)によりデジタル画像の開発・事業化が推進されると予想されます(行政側の意図)。

第4次産業革命による業態変化が知財戦略・活動に与える影響(まとめ)

上記の調査等により、以下のことが確認されました。

〇特許

 ①ビジネスモデル関連発明をはじめ、システム・サービス化が進行している。

 ②AI、IoTの活用が進んでいる。

 ③知財行政面でもAI、IoTは重要視されている。

〇商標

 ①役務(サービス)関連の商標出願の割合が商品関連の商標出願より多くなっている。

 ②第4次産業革命の技術ワードが出願されている。

 ③第4次産業革命に関連する事業が進行していると予想される。

〇意匠

 ①画像を含む意匠のうち電子情報入出力機器を除く分野において出願件数・割合が増加している。

 ②法改正により、ネットワークを通じて提供される画像や道路に投影された画像等が保護対象になる。デジタル意匠が増加すると考えられる。

 

 上述の確認された業態変化等に対応するための知財活動として、下記の視点が重要になると考えます。

 

 〇上述より、特許、商標、意匠について、より一体的な開発・知財活動が必要になる。

 〇 デジタル・情報を視点として、特許と意匠との連携・連動が新しい知財活動となる。

 〇商標については、全業種共通の技術ワード等について、出願競争になるケースが生じる。また、商標業務において、法律面に加え、技術面の理解がより必要になる。

 〇 上述を含め、知財MIXではなく、社会・技術における解決すべき課題から、発明・意匠・商標ブランドの活動が同時に始まる体制が好ましいと考える。

 

 以上、IoT,AIや新たな知財活動・戦略については、個々別々に更に詳細に検討する必要がありますが(弊所HPでもづ適宜追加)、概要としては上述のように考えます。

 貴社知財活動・戦略に何かお役に立てば大変嬉しいです。ご質問・ご依頼等がございましたら、お気軽にご連絡ください。

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