商業用トラックの自動運転 ~物流革命の視点~

 近年、普通自動車の電動化や自動運転化等の取り組みが急ピッチで進められている。運転支援のレベルから完全自動運転化に向けて実証実験が繰り返されている。

 また、商業用トラックにおいても同様に自動運転化等に向けた開発や実証実験が進められている。

 しかし、商業用トラックの自動運転等については、自動車の進化という視点に加えて、「物流革命」という視点が必要である。例えば、普通自動車における自動運転等の必要性と、商業用トラックにおける自動運転等の必要性とは視点が異なる。また、自動運転等における必要な設備、利用シーン・態様等も大きく異なる。

 そのため、今後の事業戦略、業界予測、技術動向調査や特許調査等、いずれにおいても、「物流」の視点での検討・整理が必要であると考える。

物流業界とトラックの自動運転等の必要性

 コロナ禍により物流量が大幅に増加している。物流業界においては、物流量の増加にともない人出不足が顕在化している。特に、トラック運転手の人手不足、更には高齢化の問題もあり、構造的な改善が急務になっている。

 この改善策として、トラックの自動運転化や隊列運転、ロボット宅配、ドローン活用等、第4次産業革命的な視点での取り組みが多数進められている。

 ここで、商業用トラックの自動運転化等につき、普通自動車の電動化や自動運転の視点とは異なる視点で以下に整理する。

物流の視点からの整理

 商業トラックの自動運転化等について、物流の視点から整理してみる。

物流形態をおおきく形態1から3に整理する。

 

○形態1:高速道路での高速・長距離輸送

  隊列自動運転+高速道路内だけを往復輸送する。

○形態2:固定ルート輸送(主にBtoB)

  固定ルートを自動運転で輸送する。

○形態3:最終顧客へのラストマイル輸送(主にBtoC)

  配送バン、ロボット、ドローン等を組み合わせて輸送する。

 

 以下に、各形態ごとに、技術的な課題を中心に、検討すべき課題を簡単に列挙する。

 

「形態1」高速道路での高速・長距離輸送

 「形態1」として、高速道路での高速・長距離輸送を例示する。高速道路での高速・長距離輸送としては、①商業用トラックの隊列自動運転であり、かつ、②高速道路内だけを往復輸送することが好ましいと考える。効率・技術・安全面において好ましい形態であると考える。形態1における検討課題は、例えば、以下を例示できる

 

①商業用トラックの隊列自動運転

 ・自動運転技術、無人運転技術、遠隔運転技術

 ・隊列走行技術、事故対応技術

 ・自動運転管理システム、セキュリティ技術

 ・システム管理をする組織体

 ・自動運転、隊列運転に関する規格標準化

 

②高速道路内だけを往復輸送

 高速道路の出入口の物流ターミナルで荷物を隊列トラックに積み替え+高速道路出入口の物流ターミナルで荷物を隊列トラックから積み下ろしする態様。

 ・物流ターミナル(複数個所)、土地確保、規模・機能等の構想、設計、建設

 ・隊列構成の予約・管理システム

 ・出発到着等のスケジュール管理システム

 ・充電装置等の規格標準、設置

 ・コンテナやパレットの規格標準化

 

 形態1については、技術的には、セキュリティが重大課題ではあるが、基本的な部分は既に実施可能に近いレベルにあると考える。今後は、インフラ面(システム+ハード)が対応すべき課題になってくると考えられる。

 具体的には、物流ターミナル等のハード設備の構築、各種管理システムの構築、ハード・システムの管理組織の構築が重要な課題になると考える。

 また、ソフト・ハード面における規格標準についても対応すべき課題であると考える。

「形態2」固定ルート輸送(主にBtoB)

 「形態2」として、固定ルート輸送(主にBtoB)を例示する。具体的には、固定ルートを自動運転で輸送する態様である。イメージ的には、複数の部品をそれぞれ組立工場に輸送する態様である。形態2における検討課題は、例えば、以下を例示できる。

 

 ・自動運転技術、無人運転技術、遠隔運転技術

  ⇒郊外・市街地であるので、より高度な自律性が必要

 ・ルート設定管理システム

 ・出発到着等のスケジュール管理システム

 ・在庫・生産システムとの連動

 

 形態2については、技術的には、形態1と同様に、基本的な部分は既に実施可能なレベルに近いと考える。形態2においては、現実の事業活動に必要な態様で商業用トラックを自動運転・輸送活動をさせるシステムの構築が重要であると考える。

「形態3」最終顧客へのラストマイル輸送(主にBtoC)

 「形態3」としては、最終顧客へのラストマイル輸送(主にBtoC)を例示できる。ラストマイル輸送としては、例えば、配送バン、ロボットやドローン等を組み合わせた輸送である。形態3における検討課題は、例えば、以下を例示できる。

 

 ・自動運転技術、無人運転技術、遠隔運転技術

 ⇒郊外・市街地であるので、より高度な自律性が必要

 ・自動運転管理システム、セキュリティ技術

 ・自動運転、隊列運転に関する規格標準化

 ・ドローン自動移動技術、遠隔操縦技術

 ・ロボット自動移動技術、遠隔操縦技術

 ・複合管理システム

 ・ドローン、ロボットの事故、盗難、社会受容性

 ・ドローン、ロボット輸送に関する法規制

 

 形態3については、まだ技術的に解決すべき事項が多い。また、形態3においては、現実の事業活動を実現するための実証実験、法規制の制定、社会受容性の醸成等が必要であると考える。

俯瞰視点

 上記の課題等を俯瞰してみると、単に商業用トラックが自動運転になる、という単純なものではない点に留意する必要があることを再認識する次第である。

 

大きな視点として、「自動車産業の大革命」から派生する「社会全体の大改革」の一局面の「物流革命」における一局面である、と考える。商業用トラックの自動運転化、という単純な技術の向上・代替技術の話ではない、という認識が重要であると考える。

 

上述の技術的課題以外の検討すべき課題も簡単にメモする。

○法制度

 ・レベル3以上の責任負担の詳細の検討

 ・免許の内容・要件同乗者・添乗員の免許所持の必要性等の再検討

 ・初期段階では法整備が不十分のため想定できない法的責任を負う可能性あり

○安全性

 ・センサの故障やシステム不安定時の対応、事故時の対応等、シミュレーション・検討すべき事項はまだ多い

 ・ハッキング等への対応等も非常に重要

○技術

 ・電動化や自動運転技術の開発、実証が総合自動車に比べて遅れている可能性(特許件数等より)

 ・複雑な交通状況、各種移動体(人、自転車や2輪)が混在する市街地での自動運転技術

○社会受容性

 ・社会全体の自動運転に対する信頼が醸成されるには時間が必要

 ・ドローンやロボット輸送の安全な利用+社会の理解

○知財・標準規格

 ・通信分野と同様に標準規格の争い

 ・多数の他社特許権を侵害するリスク

○ビジネス面

 ・ビジネスシステムに対応した特許出願の重要性大

 ・長距離トラックを運用する中小企業は独自での開発・事業運営は難しくなる

 ・プラットフォームシステムによる支配も進む可能性大

 ・技術・方式・ビジネスモデルの変化が早い

  ⇒初期投資が無駄になる、ゲームチェンジ等のリスクあり            

技術・知財面のポイント

 以下に、①特許出願面と、②技術動向・知財情報分析の視点におけるポイントについて、簡単にメモする。 

 

①特許出願面

 ・各課題に対応した特許出願

 ・標準を意識した特許出願+積極的な標準化活動

 ・管理システム(主にインフラ)に関する特許出願

 ・ビジネスシステム(サービス・ソリューション)に関する特許出願

※特に、メーカは技術的な特許出願に注力しがちであるが、標準、管理システム、ビジネスシステムに関する特許の方が事業・市場を支配する源泉になる場合が多いため(支配されないためにも)注力すべき領域である。

 

技術動向・知財情報分析の視点

 上述の通り、各形態ごとに、技術・知財について調査・分析するポイントが異なる。「自動運転」「隊列運転」等についての調査・分析も重要であるが、各形態ごとに課題や実施の態様に対応した調査・分析することが重要であると考える。

 また、システム・ハード設備ともに、技術的な検討に加え、規格標準や、管理システム・ビジネスシステムを視点とした調査・分析が重要である点にも留意する必要がある。

キーワード:自動車産業、自動運転、電動化、物流革命、トラック自動運転、隊列運転、商業用トラック

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