本件調査分析は、AIエージェントを利用したビジネス関連発明の分析により、AIエージェントの経営課題解決への利用に関する調査分析を行うことを目的とする。
<結論概要・今後の対応>
★「AIエージェント」への取り組み
○現時点でも出願件数が増加しているが、今後のさらなる増加が予想される。
⇒要対応+経営判断で迅速・集中対応
○通常「エージェント」との差異を出す⇒「AIエージェント特有」の機能・役割や特徴的な動作を視点した発明の創出
⇒例えば、「計画・推論」「調査・報告」「交渉・対話」等の特有のAIエージェントの特徴的な機能・役割を列挙・整理+発明創出活動を推進
○今後(次のステップ)は各業種や各社の経営課題に対応した「AIエージェント」発明の創出
○(内部)エージェント連携、外部対応(交渉等)視点での「AIエージェント」発明の創出
★「マルチAIエージェント」
○現状、「マルチ(AI)エージェント」への対応が不十分。今後の最重要テーマの一つであるので注力すべき。現時点では、ねらい目の領域。
○組織構造(+ワークフロー)を意識した「マルチAIエージェント」の創出
・組織タイプ(階層、分散等/協力、交渉、管理/動的、静的)
・特有の役割:リードエージェント、統括エージェント、品質管理、その他
近年、企業活動において、生成AIの利用が急速に進んでいる。具体的には、生成AIの企業活動の効率化や経営課題解決の手段として利用が進んでいる。企業活動において、経営課題を解決するためにAIを利活用することは、最重要活動の一つになっている。
AIに対する重要性は、既に国内外で十分に認識されているところであり、研究開発・実装化とともに、AI関連発明の特許出願も積極的に行われている。AI関連発明の特許出願件数は、2015年ころから増加をはじめ、近年では急激に増加している(図1)。また、上述のような背景より、AIを利用したビジネス関連発明が多く特許出願されてきている。
このような状況のなか、「AIエージェント」を利用したビジネスシステム等が注目されてきている。
「AIエージェント」は、自律的に調査、生成、交渉、他の機能との連携等を行い、目標を達成するよう動作できるため、事業活動における自動化・効率化等を大幅に向上させるビジネスシステムの構築が期待される。
また、複数の「AIエージェント」を互いに連携させてより高度な目標を達成する「マルチAIエージェント」の開発・実装も進んできており、「AIエージェント」の利用による高度な経営課題の解決が期待されている。
ここで、本件調査分析は、AIエージェントを利用したビジネス関連発明の分析により、AIエージェントの経営課題解決への利用に関する調査分析を行うことを目的とする。
<AIエージェントとは>
「AIエージェント」の定義は開発企業によって異なるが、例えば、「設定された目標や、自然言語で与えられた指示に対して、自動的にタスクを決定(必要に応じてタスクを細分化)して処理を実行する機能をもつもの」であるとされている[総務省, “第1節 第1章 「社会基盤」としてのデジタルの浸透・拡大と動向,” 令和7年版情報通信白書, p. 12, 2025.]。
また、各社定義や提供されているAIエージェント関連のサービスについて、以下に例示する。
<AIエージェントまでの変遷>
<以前・現在:受動的>
○RPA:ルールに従って定型業務を自動化:例)マウス・キーボードの操作等
○単機能AI:単機能に特化したAI:例)画像認識、音声認識等
○生成AI:自然言語による指示(プロンプト(命令・条件等))でテキストや画像を生成:例)文書作成、アイディアだし等
<今後:能動的>
○AIエージェント:指示を理解+自律的に行動(AI自体が計画・タスク割り当て・行動・目的達成):複数ツールをまたぎタスク遂行
<AIエージェント:概要>
○AIエージェントは、生成AIの機能向上や計画・推論能力の向上等により、急速に進展
・まず生成AIは、人からの指示と学習データに基づきテキストや画像を新たに生成する機能を有するもので本当に革新的なもの
・AIエージェントは、さらに生成AIの機能を多面的に利用し、人が設定した目標を理解し、自ら計画を立て、タスク分解・割り当てし、状況を判断しながら最適な行動を選択し、目的を達成するよう行動することができ、正に自分の代理・エージェントとして機能するも
・AIエージェントの特徴として、例えば、自律性:指示なしで自らの判断で行動、社会性: 他のエージェントと協力または競争、反応性: 環境の変化に対応して行動を調整、先見性: 目標を達成するために計画を立てる等があげられる。
○アーキテクチャ概要:以下の3層を有して構成される
・エージェント層:AIエージェント
・ツール層:各種実行ツール
・外部環境層:例)プログラム実行、DB、Web検索API等
(イメージ)AIエージェント(エージェント層)が各種実行ツール(ツール層)を利用して、各種プログラム等(外部環境層)を実行してWeb検索や文章やグラフの作成等を行う
<マルチAIエージェント>
○複数の自律的なAIエージェントが協調・分業+コミュニケーション⇒複雑なタスクやより高度な目標を達成
○統括・リードエージェント等が(場合により)存在
○情報処理手順:業務ワークフローと類似
○エージェントの数・構成・役割分担:組織の構造・役割分担と類似
○各種タイプ:複数エージェントが協力するタイプ、互いに監視するタイプ、交渉・調整するタイプ(1対1型、中央集約型、分散型)等
1)調査方法
(1)データベース:パテント・インテグレーション
(2)調査対象期間:出願公開 2016年1月~2025年9月(※2025年の件数は予想件数)
(3)検索条件
○ビジネス関連発明(BM):FI(G06Q10-50,90)
〇AI系:FI+キーワード(要約・請求範囲)
※AI関連発明の出願状況調査報告書(特許庁)[1]に記載のFI、キーワードを参考にして設定
〇エージェント系:キーワード(要約・請求範囲)
※ノイズ過剰防止のため直接的なキーワード使用
〇機能・役割視点の検索:項目:マルチ・複数、計画・推論、調査・報告、交渉・対話、監視・調整):キーワード検索(要約・請求範囲)※ノイズ過剰防止のため直接的なキーワード使用
・その他:FI(IPC)、Fターム、出願人
2)調査分析内容
①ビジネス関連発明×エージェント系(AI限定なし、参考・比較用)
・件数:全体(10年分)、FI(IPC)、機能・役割
②ビジネス関連発明×AI系×エージェント系(主な分析対象)
・件数:全体(10年分)、件数推移、FI(IPC)、機能・役割、Fターム、出願人
・AIエージェントのタイプ分析(要約・請求範囲等を確認して分析・分類)
1)全体件数
○上記①(BM×エージェント):1370件(BMの1.22%)
○上記②(BM×AI×エージェント):242件(BM特許の0.22%、BM×AIの1.42%、上記①の17.6%)
⇒上記①②とも「エージェント利用」特許の割合は同程度か少し高い程度(①⇒BM特許の1.22%,②⇒BM×AIの1.42%):AI活用に関係なく「エージェント利用」が通常の検討項目であるのか、AIエージェント②の出願がまだ公開前であるか(2026年以降にさらに急増?)等は不明⇒右の推移を踏まえると、エージェントに対する意識UP⇒続けてAIエージェントに注目という流れか
⇒BM特許×「エージェント利用」特許①における「AI利用(AIエージェント)」特許②の割合は17.6%:BM特許におけるAI利用の割合(15.1%)より少し高い程度( ⇒同上コメント(右グラフ推移
2)全体推移(図2)
○上記①(BM×エージェント)、②(BM×AI×エージェント)とも近年増加(微増⇒2025年急増)
⇒「エージェント利用」発明への意識が高まっている
⇒続けて「AIエージェント」発明への取り組み拡大と予想
★対応:通常「エージェント利用」との差異を出す必要
⇒AI利用による(特有の)新しい視点・処理・機能等の検討が有効
3)出願人(上位)
〇ソフトバンクグループ株式会社の件数が多い(近年注力)
⇒経営判断+至急対応している(前年2024までの件数との比較より)ことがわかる
〇大手IT系企業が多い(自社利用でなく他社へ提供):共通の経営課題解決の視点で開発(先行)
⇒今後(次の段階)、各業界・各社特有の課題を解決する視点での「AIエージェント」創出は有効
(1)全体件数(表3)
○上記①(BM×エージェント)、②(BM×AI×エージェント)とも各分類の件数バランスは似ている
○上記②において(①と比べて:AI利用にシフトした場合)、G06Q10,30,50の割合は増加している。特に(BM特許における割合を基準(BM特許におけるG06Q10の割合は25%)とすると)G06Q10の割合は高い。
(2)推移(図3):上記②(BM×AI×エージェント)
○近年G06Q50が急激に増加
⇒各業種の経営課題に対応した「AIエージェント」利用発明の創出が活発化しているか
○ここ数年G06Q10も増加
★ G06Q10(経営管理)も先行して増加⇒現在・次はG06Q50(各業種)が急増という流れか
★ ITベンダーだけでなく、メーカ(自社実施)も対応⇒この流れもあわせるとやはりG06Q50(各業種)は更に急増か
6)Fタームごと:上記②(BM×AI×エージェント)(表4)
○業務システム系5L050CC(11:サービス業(44件)、12:サービス業・情報サービス業(17件))が多い
○電子商取引5L030BB(08:マーケティングサービス・情報サービス業(22件))も多い
○管理・経営系5L010AAでは、管理又は経営の04:予測又は最適化(14件)、11:オフィスオートメーション(12件)、20:その他の管理経営システム(10件)や、06:プロジェクト管理・資源,業務,人員(12件)が多い。
⇒これらの領域・課題に対応する「AIエージェント」利用発明が多く創出(これらのFタームの件数が多いのは、初期段階だからか、重要領域だからか、IT大手企業が対応する領域・課題だからか(個人的には全部かと感じているが)
⇒今後の推移を要観察(+今後どの領域が急増するかの予測・対応する必要:個人的には前述の通り、各業種ごとの課題に対応したAIエージェントが増加する方向と予測
⇒今後は業務システム系5L050CC が特に急増し、並行して管理・経営系5L010AA が安定的に増加(or多い件数を維持)すると考える
(1)機能・役割:全体件数(表5)
○上記②(BM×AI×エージェント)において(①と比べて:AI利用にシフトした場合)、調査した機能・役割すべての割合が増加
○特に「計画・推論」「調査・報告」「交渉・対話」機能・役割の増加が大きい
⇒「AIエージェント」特有の機能・役割に関する件数が増加
○マルチ・複数の件数(割合)が少ない(予想より少ない)
⇒「マルチ(AI)エージェント」への対応が不十分。特に、「マルチAIエージェント」は今後の最重要テーマの一つであるので、要注力。(言い換えると)現時点・今後のねらい目の領域。
(2)機能・役割:推移(図4):②(BM×AI×エージェント)
○近年「計画・推論」「調査・報告」「交渉・対話」機能・役割の件数が増加
⇒左の「AIエージェント」利用発明創出(件数、①に対する増加)に対応している
〇特に、「交渉・対話」が急増
⇒AIエージェントによる自動化拡張の方向性の一つか
7)AIエージェントのタイプ(表6)
○上記②(BM×AI×エージェント)で抽出された特許出願について、要約・請求範囲の記載を中心に発明内容を確認し、「AIエージェントのタイプ(機能・役割についても分類・分析(集約・抜粋)」について分析・分類した。
○エージェント数
・単数(1種類)の場合が多い。複数・多数も一定程度⇒異なる複数の機能・役割のエージェントが連携というタイプは多くない
・いわゆるAIエージェントは上記割合より少ない(エージェントであれば上記に分類)
○機能・役割
・AIエージェントを単に有するだけ(AIエージェント特有の機能・役割や特徴的な動作等がない等)に近い発明が多い(単に記載だけ等)。
・調査・解析・特徴把握、生成・作成、連絡・報告・提案の割合は多い⇒各種自動化を推進する機能・役割(一般にAIエージェントのの特徴として認識される機能等)の割合多い⇒先行して創出・実装
・対話・会話の割合は比較的多い⇒交渉の割合は少ない(今後増加が予測される⇒狙い目)
・連携・関係(一定の関係)の割合も少ない。複数・多数(エージェント数)と比較しても連携・関係の割合はすくない⇒マルチエージェントも含め、複数種類のエージェントの連携は重要領域
○マルチエージェント:重要度UP⇒狙い目・注力領域
・マルチAIエージェント(として機能)の割合が少ない
・リードエージェントや統括エージェントの割合が非常に少ない
・同様に(そのため)、優先順位やタスク割当をするエージェントが少ない
⇒組織構造を意識したマルチAIエージェント創出が有効
以下に上記で説明した分析結果のポイントを抽出し整理する。
<全体件数>
○上記①(BM×エージェント)、②(BM×AI×エージェント)とも近年増加
⇒「エージェント利用」発明への意識が高まっている
⇒「AIエージェント」発明への取り組み拡大と予想
○対応視点:通常「エージェント利用」との差異を出す必要
⇒AI利用による(特有の)新しい視点・処理・機能等の検討が有効
<出願人(上位)>
〇ソフトバンクグループ株式会社の件数が多(経営判断+至急対応)
〇共通の経営課題解決の視点で開発(先行)⇒今後(次の段階)、各業界・各社特有の課題を解決する視点での「AIエージェント」創出は有効
<IPC分類ごと>
○G06Q50が急激に増加
⇒各業種の経営課題に対応した「AIエージェント」利用発明の創出が活発化しているか
★ G06Q10(経営管理)が先行⇒現在・次はG06Q50(各業種)という流れか
<Fタームごと>
○業務システム系5L050CC(11:サービス業(44件)、12:サービス業・情報サービス業(17件))が多い
○管理・経営系5L010AAでは、管理又は経営の04:予測又は最適化(14件)、11:オフィスオートメーション(12件)、20:その他の管理経営システム(10件)や、06:プロジェクト管理・資源,業務,人員(12件)が多い。
⇒今後、各業種ごとの課題に対応したAIエージェントが増加する方向と予測⇒業務システム系5L050CCが特に急増 、管理・経営系5L010AA が安定的に増加と考える
<機能・役割>
○特に「計画・推論」「調査・報告」「交渉・対話」機能・役割の割合増加が大きい(「AIエージェント」特有の機能・役割出願増)
〇特に「交渉・対話」が急増
⇒AIエージェントによる自動化拡張の方向性の一つか
○マルチ・複数の件数I(割合)が少ない(予想より少ない)
⇒「マルチ(AI)エージェント利用」への対応が不十分。特に、「マルチAIエージェント」は今後の最重要テーマの一つであるので、要注力。(言い換えると)現時点・今後のねらい目の領域。
<AIエージェントのタイプ>
・調査・解析・特徴把握、生成・作成、連絡・報告・提案の割合は多い⇒各種自動化を推進する機能・役割(一般にAIエージェントのの特徴として認識される機能等)の割合多い⇒先行して創出・実装
・対話・会話の割合は比較的多い⇒交渉の割合は少ない(今後増加が予測される⇒狙い目)
・連携・関係(一定の関係)の割合も少ない。
⇒マルチエージェントも含め、複数種類のエージェントの連携がより重要
○マルチエージェント:重要度UP⇒狙い目・注力領域
・マルチAIエージェント(として機能)の割合が少ない
・リードエージェントや統括エージェントの割合が非常に少ない
・同様に(そのため)、優先順位やタスク割当をするエージェントが少ない
⇒組織構造を意識したマルチAIエージェント創出が有効
<ポイントまとめ・整理>
「AIエージェント」への取り組み
○要対応+経営判断で迅速・集中対応
○AIならでは特徴を出す:AI利用による(特有の)新しい視点・処理・機能等の検討
○共通の経営課題解決の視点で開発(先行)
⇒今後(次の段階)、各業界・各社特有の課題を解決する視点
○自動処理等の視点:①各種処理(AIエージェント自体の処理内容)、②(内部)エージェント連携、③外部対応(交渉等)等
⇒②(内部)エージェント連携、③外部対応(交渉等)が次の課題か
「マルチAIエージェント」
○現状少ない⇒重要度UP:狙い目・注力領域
○組織構造(+ワークフロー)を意識した創出
・組織タイプ(階層、分散等/協力、交渉、管理/動的、静的)
・特有の役割:リードエージェント、統括エージェント、品質管理、その他
上記分析結果・考察(まとめ)に基づいて、下記に今後の対応案を例示する。
<「AIエージェント」への取り組み>
○現時点でも出願件数が増加しているが、今後のさらなる増加が予想される。
⇒AIエージェントの実装や発明創出の対応が必要+経営判断で迅速・集中対応が必要
○通常「エージェント」との差異を出す
⇒「AIエージェント特有」の機能・役割や特徴的な動作を視点した発明の創出
⇒例えば、「計画・推論」「調査・報告」「交渉・対話」等の特有のAIエージェントの特徴的な機能・役割を列挙・整理して発明創出活動を推進することは有効な活動
○今後(次のステップ)は各業種や各社の経営課題に対応した「AIエージェント」発明の創出
○②(内部)エージェント連携、③外部対応(交渉等)視点での「AIエージェント」発明の創出
<「マルチAIエージェント」>
○現状、「マルチ(AI)エージェント」への対応が不十分。今後の最重要テーマの一つであるので注力すべき。現時点では、ねらい目の領域。
○組織構造(+ワークフロー)を意識した「マルチAIエージェント」の創出
・組織タイプ(階層、分散等/協力、交渉、管理/動的、静的)
・特有の役割:リードエージェント、統括エージェント、品質管理、その他
<参考文献>
[1] 特許庁, “AI関連発明の出願状況調査報告書,”2024. [オンライン]. Available: https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/sesaku/ai/document/ai_shutsugan_chosa/hokoku.pdf [アクセス日: 17 10 2025].
[2] 総務省, “第1節 第1章 「社会基盤」としてのデジタルの浸透・拡大と動向,” 令和7年版情報通信白書, p. 12, 2025.
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