「IoT」と「IT」は、技術分野としては近いようですが、実際は大きく相違します。「IoT]には、ビックデータ、AI、各分野の技術、ビジネス視点、リアル(現実)、社会課題の解決・・・等、非常に重要な新たな視点・対応すべき事項が生じています。
「IoT」は、「IT」と同じではないのです。これまでの「IT」への対応では、「IoT」には対応できないのです。
近年、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)というキーワードが頻発しています。IoTは、AI(人工知能)やビックデータと共に、第4次産業革命における最重要の技術分野として、技術や事業の面だけでなく、知的財産の面でも最も注目されている分野です。
IoTは、ビックデータやAIと密接に関係してきます。IoT、ビックデータ、AIは、ざっくりと下図のような関係です。
簡単な説明ですが、「各種センサー」の爆発的な増加と通信インフラの整備により各種情報が連続的に取得され「ビックデータ」が蓄積され、「ビックデータ」を各種課題の解決に利用するため「AI」が活用されます。そして、これら各種情報を取得+活用する課題解決システムが「IoT」システムとなります。
IoTは、IT分野だけでなく、製造業を含む多くの事業分野(ほとんど全ての分野)に関係してきます。そのため、ITに不慣れな業界の企業も必然的に対応せざるを得ない状況になっています。
IoT は、多くの業界において、様々な課題解決のために活用されます。
「IoT」化の進行により、例えば、サービスプラットフォーム等のレイヤに多くの異業種・レイヤの企業が参入・集中することになります。
これまで「競合」すると考えていなかった企業と競合関係になる可能性があります。
IT企業は多くのメーカーと競合する可能性があり、逆にメーカーは多くのIT企業とIT関連の分野で競合する可能性があります。競合関係が大きく変化する可能性があります。
また、IoTでは、事業内容と技術内容とが非常に近いため、技術内容を保護する知的財産は事業(の保護)により直結しているといえます。
IoTは、IT(Information Technology)と分野としては近いような感じがしますが、実際のビジネスにおける現実社会への影響・実施の困難さは大きく異なります。
そのため、IoT関連発明等を理解し、知財による好適な保護の実施のためには、「IT」の知識・特許スキルだけでは不足で、「各技術分野の知識・特許スキル」が必要であり、さらには「ビジネス視点」、またさらには「現実社会に実装」であること、つまり「リアル社会の厳しさ・事故が許されないシステム」であることを理解する(できるようになる)必要があります。
IoTにおいては、「技術面の理解」に加え、「ビジネス」や「社会科学的」な視点を持つことが必要であるといえます。
IoT はデータが重要であり中心です。IoT においては、データの流れに沿って知財が創出されていくイメージであり、従来の知財と感覚が異なります。権利化においても、取得されるデータの内容、データにおける抽出・加工・処理の内容や、データを利用した制御の内容等がポイントであり、データが中心となっています。
IoT は、「リアル」なシステム・方法であるため、ネット上だけでなく「現実の社会」においてシステム・方法が創出され、実装されます。
また、IoT においては、研究・開発ステージだけでなく、製造( 工場)、購買・販売、販売後の利用( 製品を利用したサービス) 等のステージおいても創出され、実装されます。
例えば、工場においては、効率化、品質管理、エネルギー管理、安全監視・管理、製造ライン全体の最適化等を実現するIoT システムが創出・実装されます。工場においては、製造ステージおける各種課題に対応する様々なIoT システムが創出・実装されます。更に、工場においては、資材購入、部品発注、出荷、物流、工場の管理運営や他工場との連携( 複数工場での最適化) 等、事業
や経営の課題に関連するIoT システムも同時に創出・実装されます。
また、製品利用サービスとしては、例えば、自動車を利用した自動運転システム、ベッドを利用した介護システム、ロボットを利用した見守りシステム等、これらはシステム自体が新規事業となります。
IoT システムは、事業や経営に様々な角度で深く関係しています。そのため、IoT 時代の知財戦略においては、単に技術的に優れた発明等の権利化を目指すものではなく、ビジネスの視点が非常に重要となっています。
まず、IoT関連特許はIT関連特許でもあるので、IT関連特許における課題を引き継ぎます。更に、IoT関連特許における課題(一般的)があり、今後は更にIoT分散処理化における課題が生じると思われます。
つまり、IT関連発明の課題+IoT関連発明の課題(一般的)+IoT関連発明の課題(分散処理等)に対応していく必要があります。
IT関連特許における権利化・権利行使面の課題は、例えば、下記の通りです。
○権利行使面
・「複数主体」による実施に対して「直接侵害」が認められにくい。
・「複数構成物(例えば、サーバ+端末)」のうち一つが海外に配置されている場合、直接侵害および間接侵害ともに認められにくい。
○権利化面
・必要なクレーム数が非常に多く、通常のクレーム数で発明を完全にカバーするのは困難。特に、ブロードバンド化とスマートフォン普及とにより、発明構成要件がサーバと端末のいずれに存在して良い場合が生じ、この場合には必要なクレーム数は更に増加し、通常クレーム数で発明を完全にカバーするのは非常に困難。
IT関連特許における権利化・権利行使面の課題への対応は、例えば、下記の通りです。
△完全な対応は困難⇒間接侵害での対応等(次善策)
・システムクレームにおいて、不必要な限定しない。例えば、構成要素の配置を限定しない(サーバ、端末に含まれる等の規定をしない)。
・実施事業を保護するクレームを充実させる。
続けて、IoT特許における権利化・権利行使面の一般的な課題は、例えば、下記の通りです。
・「IT」+「各技術分野」の理解が必要(技術的理解、特有の事項の理解等が必要)
⇒リアル社会に実装
・「ビジネス」と「技術」との双方の視点:ビジネス+技術保護に適したクレーム等
⇒IoTは事業に広く関与
・複合視点での保護が必要:特許のみでの保護が難しい場合がある⇒関連するAI,BD、データ
⇒関連する「データ構造」、「AI」についても権利化検討
IoT特許における権利化・権利行使面の一般的な課題への対応は、例えば、下記の通りです。
○「IT」+「各技術分野」を理解できる人材による権利化の検討
⇒「IT」との差異。現実社会に実装される。「IT」+「実装される分野の技術的知見・視点」が必要。
○「ビジネス」+「技術」双方の視点での権利化の検討
⇒IoTは幅広い分野・ステージで創出・実装(研究開発部門ではなく、製造、購買、流通、製品を利用したサービスのステージ等)
○「特許」に加え、著作権、不競法、および契約で複合的に対応する。特に、データ保護のための契約が必要
⇒IT企業とメーカとが共同でIoTシステム構築:データの扱い契約でキッチリ
○「データ構造」、「AI」についても特許による保護等を検討
現状は、クラウド集中がトレンドですが、今後は分散処理化が進む可能性があります。IoT実装が進むなか、現状のクラウド集中方式では対応しきれない課題が生じてきています。
○データ量の増大
まず、IoTにおける「クラウド集中」の課題として、「データ量の増大」があげられます。IoTにおいては、多数のセンサ・デバイスから各種データが連続的に取得・送信されます。従来のITシステムにおいて取得・送信されるデータ量と比較にならないほどのデータが取得・送信されます。
「データ量の増大」により、例えば、「通信量:データ送信網への過剰負荷」「データ処理:サーバ処理負荷の増大」「応答時間:遅い」「クラウドサーバが海外:応答時間、送信網への負担」等の課題が生じます。
○リアルの厳しさ・要求の高度化
次いで、IoTにおける「クラウド集中」の課題として、「リアルの厳しさ・要求の高度化」への対応があげられます。IoTシステムは現実社会において実装されるシステムであり、現実社会に存在する各種装置・機器等が実際に駆動・移動等されます。そのため、従来のITシステムに比べて、非常に厳格な精度、応答性や安全性が要求されることになります。
「リアルの厳しさ・要求の高度化」への対応において、例えば、「応答時間:即応性」「耐故障:故障許されない・ゼロノックダウン」「セキュリティ」「個別最適対応」等の課題が生じます。
このような状況のなか、例えば、自動運転自動車、BEMS、HEMSや生産ライン等においては、分散処理化が進む可能性が高いと思われます。
そして、IoT分散処理化の進行において生じる課題についてもしっかり対応していく必要があります。上述のIoTの課題(一般的)に加えて、IoT分散処理における課題に対応する必要があります。
例えば、IoT分散処理システム(下図のモデル)は複数のシステムを含むため、権利化においては、下記複数のシステムの発明を発掘・把握をする必要があります。
○分散化より生じるシステム
・システム全体
・クラウド-フォグ・エッジのシステム
・フォグ・エッジ-端末・機器システム
○協調・自律(連携)より生じるシステム
・フォグ・エッジ同士のシステム
・端末・機器同士のシステム
なお、特許出願においては、サーバ、端末、方法およびプログラムも検討必要となります。
また、IoTシステム・ビジネスを保護するために重要な知的財産の権利取得の方法や必要なスキルについても、IT関連発明における方法やスキルとは大きく相違します。
IoTシステムの構築において、「IT企業」と「メーカー」とが共同する場合が多くなると思われます。
そのため、IoTシステムの構築により創出された発明やビックデータ等の成果物の取り扱いが非常に重要になります。
立場ごとの視点・違いを下図に簡単にまとめます。
IoTにおける知的財産の取得・取扱いは複雑になっています。
IoTにおける特許面だけを見ても、「IT関連発明」特有の問題を理解した上で、さらに「IoT関連発明」特有の問題も理解し、これらに対応する必要があります。上述の通り、これらを理解した上で特許出願等をしないと、せっかくの素晴らしい技術が特許面で不利になる可能性があります。しっかりと対応する必要があるポイントです。
また、IoTだけでなく、関連するビックデータ、AIについても特許による保護を積極的に試みる必要があります。IoTとビックデータ、IoTとAI、IoTとAI・ビックデータ、これらの組み合わせについては、常に考える必要があります。
AI、ビックデータについては、データ構造という独特な扱いで特許出願が可能ですので、必要に応じて積極的に対応する必要があります。
さらには、特許だけでなく、著作権、不正競争防止法、契約による保護を複合的に検討・実施することが重要になります。
IoTに関連する技術や情報(データ)は、特許制度では完全に保護しにくい「価値あるモノ・情報」です。そのため、成果物については、特許出願だけでなく、契約等を含めた複合視点で自社が最大限有利になる状況を構築するよう知財活動を進めることが重要です。
Ø 弊社は、複数技術分野への対応×IT×ビジネス視点での対応を得意としております。
Ø また、IoT関連特許の好適な保護に関する調査研究等も行っております。
Ø 弊社は、複雑化・高度化する技術の好適な権利化等において、貴社のお役に立ちます。
Ø 複数分野+複合分野へ対応いたします。
○機械・構造
各種機械、加工・製造装置、電子機器の構造・部品の配置、自動車、二輪車、航空機、
半導体製造装置、日用品・衛生品、家具・建材、医療機器等
○プラント
製造プラント、電力プラント、ボイラー、水処理プラント、その他各種プラント
○制 御
電子機器、自動車・二輪車、航空機、製造装置・ライン、その他機器の制御
○電子機器等
携帯電話、スマートフォン、PDA、その他通信端末装置、
コピー機、プリンター等の画像形成装置、
デジタルカメラ、プロジェクター等の光学機器、レンズ、
アミューズメント機器、測定・分析装置、その他電子機器
○ソフトウェア
ユーザインターフェイス、情報処理、画像処理、その他内部処理
○IT、IoT
検索方法・システム、広告方法・システム、取引方法・システム、クラウドシステム、
仮想世界、セキュリティ、SNS、その他ITシステム
製造業、各種インフラ等におけるIoTシステム
フィンテック(FinTech, financial technology)
○通 信
通信システム、通信プロトコル、セキュリティ、光通信モジュール、
その他音声・データ通信技術
○放 送
放送と通信の融合(Hybridcast)、放送とSNSとの連携、放送と通信端末との連携、
その他放送技術
○化 学
食品、飲料、化粧料、医薬品、トナー、インク、塗料、その他化学製品
○生産技術
食品、化学製品、日用品・衛生品、電子部品、自動車、塗装品等の生産技術
◎複合・融合分野
上記分野の複合分野・融合分野
IoT関連のセミナーも対応いたしております。
<テーマ例>
・製造業のIoT ~IoT時代の知財戦略~
・IoTによる新規ビジネスモデルの構築:事例、ワークショップ
・IoTによるサービス化 ~ビジネスモデルの変化~
IoTの概要、IoTとAI・ビックデータとの関係や、IoTにおける知的財産面、IoTを利用したビジネスモデルの構築等についてセミナーのご要望がございましたらお気軽にお問い合わせください。