近年、第4次産業革命の進行により、自動車業界においても大変大きな変化が生じています。この変化は、技術面だけでなく、ビジネスモデル・業態面における影響が大きいこと、更には、エコシステムにも大変大きな影響を与えるものになっています。
各社においては、第4次産業革命におけるデータ主導化等の流れに乗りつつ、自動車業界全体の流れを予測し、自社の立ち位置を定義し、大変革を乗り越えて発展することができる経営・事業・R&D・知財戦略を立案・推進することが必要です。
そのためには、自動車産業における現時点での大きな方向性を確認することが重要であると考えます。
以下におきましては、自動車業界(自動車メーカ+サプライヤー)外部環境を整理し、知財情報を分析することで、自動車産業における方向性を把握することを試みています(調査:2018年11月時点)。
大きな項目としては、下記の通りです。
○自動車産業の大改革への対応
・自動車産業の変化(本ページ)
・自動車メーカGrの調査分析(⇒こちらのページへ)
・自動車メーカと競合するGrの調査分析(⇒こちらのページへ)
・エコシステムの変化(⇒こちらのページへ)
・サプライヤGrの調査分析(⇒こちらのページへ)
・大改革への対応(⇒こちらのページへ)
以下、上記各項目についてご説明いたします。
自動車産業における変化の大きな視点として、わかりやすく「CASE」が重要であるといわれています。
C:Connectivity
A:Autonomous
S:Shared & Service
E:Electric
自動車が「様々なもモノとつながり」、「自動運転化が進み」、「サービス化」が進み、「電動化」が進む、という流れになっています。
このような変化が組み合わさって進行することで、更に新たな変化が生じ、その進行も加速度的にはやくなっています。
そして、これらの変化は業態、エコシステム、バリューチェーン、価値の源泉や必要な人材等についても大変革を生じさせています。
今後の変化を完全に把握することは困難ですが、可能な限り現状分析+予測をして、中長期的に様々な施策を多数(なるべく効率的に)立案・進行させることが必要・重要です。
本変化への対応では、「技術面」だけでなく、「ビジネス面」の検討がより重要となっています。「技術面」と「ビジネス面」との両方の側面をいったりきたりで検討することが重要です。
自動車産業においては、よりサービス化が進むことが予想されます。自動車自体に関するサービス、自動車を利用したサービス、自動車を端末装置とするようなサービス等、自動車自体の製造販売という視点から、自動車が関与するサービスを考えることが重要になります。その領域は膨大ですが、先に到達しないと長期間にわたり後塵を拝することになるため、時間との勝負でもあります。
自動車産業のエコシステムにも大きな影響があります。下記にご説明するように、自動車産業において①電気自動車(電動化)、②自動運転(自動化)、③サービス化が進むと考えられるので、自動車産業のエコシステムにおいても当然に大きな変化が発生すると考えられます。この流れに乗るサプライヤーと、この流れに乗れないサプライヤーが生じます。各サプライヤーは、自社の立ち位置と今後を予測した対応を迅速に検討・自己改革する必要があると考えます。
自動車産業における大きな変化を以下の①~③と捉え、各変化についての状況を簡単に整理します。
①電気自動車(電動化)
②自動運転(自動化)
③サービス化
大きな変化①として、電気自動車(電動化)に関する状況を簡単に説明します。
2011年から2017年の世界の電気自動車(EV)販売台数は、中国、欧州を中心に、急激に増加しています。特に、中国における販売台数は急激に増加し、世界における販売台数の半数以上を占めている状況となっています。
2017年時点での各国のEV車のシェアはまだ低いですが、多くの国で日本におけるシェアよりも高いことがわかります。また、日本国内においては、プラグインハイブリッド車の割合が高いこと、また逆に多くの国では日本よりもプラグインハイブリッド車の割合は低いことがわかります。
また、下表の通り、欧州を中心に、内燃自動車禁止時期が設定されています。内燃自動車禁止時期は、2025~2045年に設定されており、この時期までにEV販売100%を達成する、という目標が設定されています。先進国を中心に、EV車に完全シフトするという流れになっています。
ここで、日本メーカにおける売り上げ(2014年度)をみると、海外販売の割合が非常に高いことがわかります。つまり、海外における内燃自動車禁止時期等の目標・規制は、日本メーカにとっても直接影響を受けるものとなります。日本メーカにおいても、EV化への完全シフト化への対応は必須になると思われます。
上記の流れと同様、日本国内においても、2030年におけるEV車の販売割合を50~70%とする目標が掲げられています。従来の内燃自動車から電気自動車(EV)へのシフトは不可避で、電動化が更に進む、という状況になっています。
大きな変化②として、自動運転(自動化)に関する状況を簡単に説明します。
自動運転は、実装化に向けて急速に進展しています。技術的な側面と、社会的(法規制、責任、安全性等)な側面の双方において解決すべき点は多く、非常に大変な領域となっています。自動運転化が進むと、生活・社会・サービス面で今まで想像でしかできなかったことが実現されるため、大変重要・期待される領域です。
自動運転のレベルは、下表のようにレベル0~5まで設定されています。現状、レベル2までは問題なく対応できる状況かと思いますが、レベル3以上になると安全対応等の主体が「運転者」から「システム」になるので、相当なハードルとなっています。「運用」に加え、「責任」主体もシステム側になってくる場合が多くなるので、その点でも簡単に実装・移行できない、という状況かと考えます。
自動運転技術は、①認知、②判断、③操作等の複数の認知情報の処理や走行路の判断での情報処理を行うため、半導体等の開発・供給が重要です。上述の電気自動車(電動化)においても、各種電子部品、制御用半導体、通信装置等、電子部品・機器が多数必要です。
半導体、電子部品・装置等のサプライヤーの役割・存在感がUPする流れになると思います。
大きな変化③として、サービス化に関する状況を簡単に説明します。
電動化・自動化に伴い(あいまって)、サービス化が進むと予想されます。これまでに考えられなかったような領域で多種多様なサービスが生じると考えます。
新しいサービスを考えることができるか否か、新しいサービスのための情報を取得できるか否かが非常に重要になってきます。自動車メーカは、自動車の開発・製造・販売という事業から、自動車に関するサービスを創出、プラットフォームを構築・運営、自動車情報インフラを構築・運営する事業が中心になり、役割を大きく変えて存続すると予測されます。
例えば、自動車を利用したサービスとして、下記のマルチモーダルのようなサービスがあります。
ネットワークとつながる「コネクテッドカー」の視点も新しいサービスの重要な視点です。以前のスマートフォンでの流れのように、自動車は情報の入出力端末として機能し、背後にあるサービスシステムと連携して価値が増加する、という流れになると予測されます。
様々な視点でサービスを創出できるので、自動車産業の企業にとっては、迅速に注力すべき(先におさえるべき)領域であると思います。
サービス分類としては、下記のような分類が提案されています。この分類では、縦軸にインフラ・車両由来データ活用型/外部リソース活用型、横軸に安全系/便利・快適系とすると共に、社会課題の解決/便利で快適な生活の実現という視点を追加して下記4つの分野に整理しています。
①セーフティ分野
②カーライフサポート分野
③インフォテインメント分野
④エージェント分野
下図においては、上記分類・分野に対応するサービスが例示されています。
①セーフティ分野:自動運転、最適交通管制等
②カーライフサポート分野:運行管理、自動車保険、ジェアリング、見守り、決済等
③インフォテインメント分野:エンタメ、VR、コンシェルジュ等
④エージェント分野:ロードアシスタント、緊急通報等
また、下図においては、上記分類・分野に対応する業界が例示されています。
①セーフティ分野:自動関連業界、交通インフラサービス等
②カーライフサポート分野:保険業界、シェアリング業界、金融業界、警備業界等
③インフォテインメント分野:エンタメ業界等
④エージェント分野:ロードアシスタント業界、保険業界、メンテナンス業界等
上述のように、自動車産業の変革により派生する変化は多種多様すぎるので、自動車メーカ単独で対応できないことは明白です。そのため、異業種、特に情報・サービス業界の企業と共同・協働することが必須・重要になります。
下図においては、本調査当時の共同・協働関係の概要が整理されていますが、今後は更に複雑+プレーヤー増になると思います。また、グーグルやアップルが自動車メーカ側で参入する可能性も高いので、共同・協働関係は、ダイナミックに変化する可能性があります。
上述した環境変化・業態変化につき、知財情報分析(主に特許情報分析)による現状確認(2018年11月時点)を行いました。
①電気自動車(電動化)
②自動運転
③サービス化
調査対象は、以下の視点で選択した自動車メーカ等です。
・自動車メーカGr
・自動車メーカと競合するGr
・サプライヤー
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