「知財情報分析」を軸とする「IPランドスケープ」は、知財部門だけでなく、事業部門・R&D部門にとっても非常に重要・有効な活動となっています。また、「IPランドスケープ」により提供される情報、提案される戦略等は、経営層・事業部門・R&D部門にとって非常に有用であり、各種活動の推進に寄与しているものです。
ここで、「IPランドスケープ」において「知財情報分析」に基づく状況把握は重要な要素ですが、本当に重要なのは、状況把握に基づく「予測」+「優れた打ち手(戦略・戦術)の立案」です。
この状況把握に基づく「予測」+「優れた打ち手(戦略・戦術)の立案」は、知財の視点に加え、社会状況、技術トレンド、業界動向、クライアント状況や競合企業の動向等の様々な視点を踏まえて検討・立案されます。
このような状況把握に基づく「予測」+「優れた打ち手(戦略・戦術)の立案」には相当の訓練・実践が必要であり、外部専門家の直接的・間接的な支援等は有効な推進方法です。外部専門家については、「調査」を専門とする専門家よりも、上述のような複数視点で「予測」+「優れた打ち手(戦略・戦術)の立案」することに十分に対応可能な専門家を選ぶことも重要であると考えます。
また、「知財部門」による「IPランドスケープ」は、「知財部門」でなければ得られなかった分析・予測・戦略立案等である必要があり、事業部門・R&D部門から「知財部門」に依頼してよかったといわれる内容である必要があります。この点からは、「知財部門」による「IPランドスケープ」は、「知財情報分析」自体も一般的な調査分析等では不十分(知財部門ならではの視点での調査分析、例えば、発明の課題・手段に踏み込んだ調査分析が必要)である点にも(知財部門の皆様は)留意する必要があります。
近年、「知財情報」を利用した経営・事業戦略の立案が注目されています。メディア等では「IPランドスケープ」として紹介され、欧米企業で採用され、日本でも急速に普及している手法です。
以前より、「知財情報分析」「パテントマップ」等、同様の手法・活動は行われてきましたが、どちらかというと「R&D戦略」「知財戦略」への活用が中心でした。
「IPランドスケープ」は、「知財情報」を「事業戦略」「経営戦略」「マーケティング戦略」「ブランド戦略」に活用することを視点とした手法・活動です。
ここで、「IPランドスケープ」で重要になるのが、「経営・事業戦略立案」「経営・事業の活動」に役立つという視点であり、提案・情報提供先が「経営層」「事業部長」である点に留意する必要があります。
「知財情報」を「経営・事業視点」で分析し、「経営・事業の課題」を解決する「経営・事業戦略」の立案に寄与する必要があります。
知財部門は、「IPランドスケープ」におけるメインプレーヤーであり、「知財情報分析」については長く豊富な経験があると思いますが、
●経営・事業視点での知財情報の分析
●知財情報分析の結果を利用した経営・事業戦略の立案
●立案した経営・事業戦略を推進する企画・活動
については、これから推進・体制構築する必要がある企業様も多いかと思われます。
「知財情報」は、特許・商標・意匠等における公開公報等の情報(書誌事項・明細書・特許請求の範囲、商標、指定商品役務、意匠、物品等の情報)です。
特許情報は、出願日、出願人・権利者、技術分類、発明概要、発明詳細内容、権利範囲等の情報を含むものです。
商標情報は、出願日、出願人・権利者、商標(ネーミング、ロゴ)、指定商品役務、商品役務区分、権利範囲等の情報を含むものです。
ここで、「知財情報」は、「個別情報」と「情報の集合体(元祖ビックデータ)」という側面を持ちます。
「個別情報」としては、事業・製品・サービス等の詳細情報の把握・分析に活用され、非常に有用です。
「情報の集合体」としては、各種動向調査分析・予測に活用され、非常に有用です。
「知財情報」は「現場専門家の予測・意図・狙いの集合」です。そのため、分析・予測の精度が高く、更には、現実化の可能性が高いため、「知財情報」分析は非常に有用であるといえます。
また、上述のように、「動向調査・予測」「詳細情報分析」の両面での分析が可能であると共に、各分野・各レベルでの調査分析・予測が可能であり、非常に有用であるといえます。
「知財情報」
◆技術・事業の「専門家」の事業・技術予測、思惑、狙いの「集合体」⇒動向予測・将来予測の情報として非常に有用!
「商標」:事業化・商品化意思決定の結果⇒「商標情報」は短期予測等に向いている
「特許」:将来重要となる+他社も実施するであろう技術・商品・システム等⇒「特許情報」は中長期予測等に向いている
従来より、知財情報はもともと有用でした。
ただし、分析対象・知財情報の活用が少し限定されていました。
・分析対象:技術・モノ
・知財情報の活用:知財戦略・技術開発戦略中心
近年、第4次産業革命等の進行により、社会環境・知財状況が変化しています。IoT、AI、ビックデータ等の利用・活用による情報ドリブンの社会になってきており、情報利用⇒社会課題を解決することが重要な活動であり、IoT、AIシステム等がビジネスに急速に適用されてきています。
このような新しい状況では、
(発明である)サービス・ビジネスのシステム≒現実の事業・ビジネスモデル
となってきており、特許的なシステムと現実の事業・ビジネスとが一体的になってきています。
上記より、「知財(サービス・ビジネスのシステム)」を考えることは、「事業・ビジネス」を考えること、という状況になってきています。
このような状況なので、「知財情報」の重要性が更にUPしてきています。
★第4次産業革命の進行:データ主導、IoT/AI、ビックデータ等
・分析対象:技術・モノ⇒サービス・ビジネスのシステム≒事業・ビジネスモデル
★知財情報の経営・事業戦略への活用
・知財情報の活用:知財戦略・技術開発戦略中心⇒経営・事業戦略
「知財情報」は、更に経営・事業戦略の検討・立案に寄与するものとなっており、上述のように、重要性が更にUPしています。
IPランドスケープにおいて、知財情報DBから直接得られる情報、1次分析情報や2次分析情報を、各視点で活用・検討して、経営・事業戦略の立案等を行います。各種知財情報としては、下記のような情報が例示されます。
<個別・詳細情報>
競合企業情報
発明者情報(キーマン)
出願日情報(時期・経過)
出願国・事業予定国情報
技術・事業分野情報
発明内容の詳細情報
当該分野の課題情報
発明内容の詳細情報
製品・サービス具体例
発明概要情報
特許発明(権利範囲)情報
<1次分析情報>動向分析・予測等
国内外技術動向・予測
各技術分野の技術動向・予測
各事業分野の技術動向・予測
競合企業(+Gr)動向・予測
発明者視点の技術予測
ホワイトスペース調査・把握
新技術・事業の参考情報
各分野の課題分析情報
<2次分析情報>
(他の情報との組み合せ)
・他知財情報:商標、意匠等
・非特許文献:論文、ジャーナル等
・企業情報:方針、企業報告書(売上、利益、事業活動等)、プレスリリース等
・業界情報:周知の情報、業界の噂
・専門家・アナリストの分析予測情報
(横断的な整理)
・全体把握のための横断整理
特許庁の人材スキル標準等において、IPランドスケープに関する事項・活動として、下記のような事項が記載されています。
<一時部抜粋>
① 知財情報と市場情報を統合した自社分析、競合分析、市場分析
② 企業、技術ごとの知財マップ及び市場ポジションの把握
③ 個別技術・特許の動向把握(例:業界に大きく影響を与えうる先端的な技術の 動向把握と動向に基づいた自社の研究開発戦略に対する提言等)
④ 自社及び競合の状況、技術・知財のライフサイクルを勘案した特許、意匠、商標、ノウハウ管理を含めた、特許戦略だけに留まらない知財ミックスパッケージ の提案(例:ある製品に対する市場でのポジションの提示、及びポジションを踏まえた出願およびライセンス戦略の提示等)
⑤ 知財デューデリジェンス
⑥ 潜在顧客の探索を実施し、自社の将来的な市場ポジションを提示する。
上述の通り、IPランドスケープでは、知財情報分析は重要ですが、単なるパテントマップではなく、経営・事業戦略等に役立つ視点での分析や分析結果の活用が必要・重要となっています。
ザックリと個人的見解としては、
知財情報を分析⇒市場・競合動向を把握・予測⇒打ち手・戦略立案に役立てる
ということであると理解しています。
また、IPランドスケープとしては、経営・事業の各段階・目的に対応した活動があります。IPランドスケープは、各視点で分析された知財情報の分析情報を活用して、経営・事業の複数工程における課題の解決に役立つ戦略の立案等、経営・事業に役立つことが期待されています。
IPランドスケープの具体的な検討内容例として、下図のような内容が例示されています。
公開情報(市場情報、事業情報)と、非公開情報(社内情報:自社内部情報、自社保有他社情報)と、知財情報(テクノロジー、ノウハウ、デザイン、ブランド等)とを統合・分析して、知財部門+経営者・事業責任者とで連携し、経営・事業戦略の立案・意思決定を行うという流れが示されています。
上記の図を単純化しますと、下図のようになります(経営層、経営・事業企画の方は、こちらの方が理解しやすいかと思います)。
つまり、経営・事業戦略の検討・策定において、「外部環境分析」に知財情報分析による動向・予測や競合企業分析等を組み入れ、「内部環境分析」に自社知財状況の情報を組み入れて環境分析を行い、「強み・弱み」を把握し、各視点ごとに「打ち手」「戦略」を検討するというものです。
更には、ホワイトスペース領域の抽出や、競合企業の技術動向予測や、差別化技術の把握等の知財情報ならではの分析情報を利用して環境分析・戦略立案等を行うと、より好ましいと考えます。
経営・事業戦略立案の過程で「知財情報をどのように有効に活用するか」「知財情報を活用してどのような経営・事業戦略を立案するか」が重要です。単に、「知財情報分析」に慣れている、というだけでは、優位性のある経営・事業戦略の立案等はできない点に留意してください。
IPランドスケープは、主に、経営・事業戦略等の検討・立案までの活動です。立案した経営・事業戦略を優位に実践するための戦略・活動が望まれます。
ここでは、IPランドスケープ活動で立案された経営・事業戦略を優位に実践するための戦略・活動として、ブループリントIP戦略があります。知財部門等が経営・事業戦略の実践に役立つIP(知的財産)を創出する戦略です。
詳細は、こちらのページをご参照ください。
知財情報として「特許情報」が分析・活用されていますが、「商標情報」「意匠情報」も同様に、経営・事業戦略の検討・立案において、重要・有効なものとなっています。
特に「商標情報」は、事業・マーケティング・ブランドの面で、「特許情報」よりも有益な情報を得ることができると共に、新商品予測、競合企業の事業分析や事業活動に寄与するネーミング等の分析・予測・検討により適しています。
「商標情報」については、「知財情報」活用における別途の新たな視点として、経営・事業戦略(特に、事業・マーケティング・ブランドの面)への活用をお勧めいたします。
⇒「商標情報」の活用はこちらへ
知的財産活動における社会活動の側面においても急激な変化が生じています。下記のよう新規課題・テーマへの対応も急務・重要であると考えております。
特に、下記の新規課題・テーマは、知財情報の外部活用(IPランドスケープは知財情報を企業の内部活動に活用)として、視点の全く異なる「知財情報」活用であると共に、企業活動・評価への影響が非常に大きいものです。
<<新規課題・テーマ>>
●ESG投資と知財
●SDGsと知財
●コーポレートガバナンスと知財
⇒こちらのESG投資,SDGs,コーポレートガバナンス×知財をご参照ください。
IPランドスケープの重要性がますます向上しています。経営層から実践を要求される前に、自発的に実践・提案することが望ましいです。
IPランドスケープは、各社ごとに分析内容、戦略立案の視点が異なります。また、同業他社とは情報や方針等を共有できませんので、外部の専門家・顧問の定期的なアドバイスが有用です。
IPランドスケープは、実践、組織内での活用や組織内の教育(重要性の認識)が重要です。例えば、下記のような活動・アドバイスをご提供いたします。
○IPランドスケープ業務の受任
○IPランドスケープにおける経営・事業戦略立案のコンサルティング
○IPランドスケープにおける経営・事業戦略立戦略の実践としての新規事業のアイディア・企画
○IPランドスケープの実践・組織内での活用等のアドバイス
○IPランドスケープの経営への活用の検討・実践・アドバイス
○IPランドスケープの経営層への説明・提案・誘導等のアドバイス
○IPランドスケープの事業部・開発部門への教育活動の実践・アドバイス
○IPランドスケープを更に進めた実践活動・組織の提案・アドバイス
(⇒ブループリントIP戦略へ)
○IPランドスケープの戦略立案工程のアドバイス・サポート(調査分析は十分できる場合)
プロジェクト方式、顧問方式ともにタイムチャージ制となっております。
タイムチャージ額は概ね、知財実務系<知財戦略系<事業・経営戦略系、に設定されています。
ご費用は、ご要望のヒアリング⇒検討項目・工数・期間等⇒お見積り申し上げます。
プロジェクト方式では、IPランドスケープ、貴社課題の解決、経営・事業・R&D・知財戦略の立案をご支援申し上げます。
顧問サービスでは、上記活動につき、貴社を継続的にご支援いたします。
プロジェクト方式⇒コンサルティングサービス
顧問方式⇒顧問サービス
知財活動・事業活動・R&D活動において、特許出願・権利化業務は大変重要な活動ですが、少し精査⇒不要な出願・権利化を控えて、知財戦略・IPランドスケープ・新たな課題・テーマへの対応を進めることも重要・可能であると考えております(下記※:少し精査することで知財戦略・IPランドスケープ・新たな課題・テーマへの対応へまわせる金額目安)。
戦略的な活動、新たな課題・テーマへの取り組み等へのシフトチェンジをご検討の際には、是非、弊所へご依頼いただければと存じます。
※国内特許出願(25~50万円/件):審査請求率70%程度、特許率75%程度
※国内特許の権利化・維持(約150万円/件)
※海外特許の権利化・維持(約200~300万円/件・国×3~5か国)
ご興味を持っていたけましたら大変幸甚です。
貴社からのお問合せ・ご連絡をお待ち申し上げます。
★IoT関連発明の保護に関する一考察 ~IT関連発明の保護における課題を参考に~
○知財情報開示の効果に関する一考察 ~ESG投資やコーポレートガバナンス・コードへの対応~
〇ESG投資やコーポレートガバナンス・コードへの対応として有効な知財情報開示とは?